(全て昨年の写真となります。今年はまだ染まっておりません)
紅葉を菓子に、お茶をいただく
林丘寺のまわりの山々が紅葉を始めると、秋の女神である竜田姫のご来訪を感じます。
ふだんは生駒山地の南、竜田山におわす竜田姫。
風の神様として祀られていたこの御方が、秋も守るようになられたのは、
お住まいにある竜田川流域の紅葉の見事さが関わっているのかもしれません。
「雲となり雨となりてや たつた姫 秋のもみぢの色を染むらむ」
これは、皇太后宮大夫俊成が詠み、続古今和歌集に収められている歌。
竜田姫が雲や雨になって、山々をあざやかな紅に変えていく様子を描いています。
紅葉の美しさをつくるのは、秋の気候。
陽の光がたっぷりと降り注ぐ日中の暖かさと夜間の寒さとが、葉を紅く染めるアントシアニン色素を増やすのだそうです。
紅葉のメカニズムが判明していなかった当時にあって、雲や雨が山々を紅葉させると詠んだ俊成の観察力には頭が下がる思いです。
秋が深まる京都では、茶会の機会も多くなります。
有名な茶会には、本阿弥光悦をしのぶ秋の光悦会がありますね。
林丘寺を建てた後水尾上皇が生きた時代は、多くのサロンが生まれた時代でもありました。公家や武家、町人が身分を越えて交流したというこのサロンでも茶会は開催されていたはず。そしてもちろん、後水尾上皇も、自ら茶会の亭主を務めたことでしょう。
こうしたことを考えながら、お茶を一服、いただいています。