南北朝・室町時代を思いおこす景色へ感謝をこめて
「歴史的風土保存計画」という言葉を聞いたことがおありでしょうか。
王朝文化が花開いた京都には、重要な文化的資産がいまなお多く残り、豊かな自然と一体化した姿を見せてくれています。
こうした景観を保存・維持するためにあるのが、「歴史的風土保存計画」なのです。
林丘寺がある修学院は、そんな制度によって守られる「歴史的風土保存区域」の一つ。
それを強く意識するのが、お彼岸の時期です。
「夕日さす田面の稲葉打ちなびき山本とほく秋風ぞ吹く」
これは、二条為明・頓阿によって撰された『新拾遺和歌集』にある二条為氏の和歌。
手際よく稲を刈り、掛け干しにする現代の光景と、南北朝・室町時代の歌で詠まれた景色が重なるのは、この土地をお守りいただいているからこそ。
私たちもまた、林丘寺を預かる責任を果たしていこうと、背筋を伸ばします。
長月の下旬になると律儀に顔を出し、私たちとともに稲刈りを見守るのが彼岸花。
シビトバナ、ユウレイバナといった怖い異名で知られていますが、もう一つの別名・曼殊沙華には、「おめでたいことが起こる前ぶれとして、天から赤い花がふってくる」という伝説にちなみ、「天上に咲く花」という意味もあります。
そう聞くと、おどろおどろしいイメージもすっかり変わってしまいそうですね。