林丘寺

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写経サロンは、月に一度のお楽しみ

林丘寺では、朱宮光子内親王のご命日に当たる6日を「六日会」として、毎月写経サロンを開いています。

2022(令和4)年で31年目となるこのサロン。
この日を楽しみにいらっしゃる皆さまにご満足いただけるよう、準備は念入りに行います。

林丘寺での写経風景をご紹介する前に、少しだけ写経の歴史をひもといてみましょう。
日本で最も古い写経の記録は、『日本書紀』にある「書生を聚めて、始めて一切経を川原寺に写す」という記述だと言われています。

仏教が日本へ伝来した飛鳥時代には、現代のような優れた印刷技術はありません。
しかし仏様の教えを広めるには、経典の存在は不可欠。そこで始まったのが経を写す、写経というお仕事でした。
平安時代に入ると、病気平癒や先祖供養といった個人的な願いのためにも写経が行われるようになります。
そして現代では「集中力を高めたい」「心を清めたい」といった心身のリフレッシュを求めて写経に挑戦する方が増えているようです。

写経の持つ意味合いの変化もふまえて林丘寺の六日会では、筆は滋賀・攀桂堂(はんけいどう)の雲平筆、紙は寺紋を入れた特注品をご用意。

その背景には、「ちょっぴりぜいたくなお道具で書道文化を味わい、心身のリフレッシュ効果を高めていただきたい」という考えがあります。

そしてもう一つ。
私たちのお寺は多くの貴人が訪れ、文化的な時を過ごした修学院離宮に隣接する林丘寺です。
もし、後水尾上皇が写経サロンを主催していたら、空間はもちろんお道具にもこだわったはず。こうした思いもあって、背伸びをしているしだいです。

さて、そんな筆と紙を机に並べたら、次はお水とシキミの葉に取りかかります。
墨を磨るお水は、後水尾上皇命名の井戸・大悲泉から汲み上げたものを使います。

シキミの葉は、紙に息がかからないよう写経の際にくわえてもらうもの。
清めの意味を持つシキミの葉を庭から摘み、裏表を念入りにぬぐえば準備は完了です。

慌ただしくも楽しい六日会で一番のお気に入りは、皆さんが紙に向かっているひと時。
真剣な顔で筆を動かすお顔を拝見していると、私の気持ちも引き締まります。

書き上がった写経をお仏壇に供え、全員で般若心経を上げたらサロンの第一部は終了です。
第二部は精進料理と汁物、水菓子を囲んで会話を楽しむ時間。

「写経とおしゃべりは月に一度の命の洗濯です」
「つらいことがあっても乗り越えていく力がつきました」

お話しの合間にこんな言葉を聞くと、思わず目が潤んでしまいます。

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