愛らしくも、ちょっぴり手がかかるお客様
夏から秋にかけては午前4時、冬から春は同5時ころ、林丘寺の1日は始まります。
起きて洗顔を済ませたら、朝のおつとめ。
日ごろの感謝と、今日1日健やかに過ごせますようにと御本尊様にお祈りを捧げたら、
日々の修行・お掃除に取りかかります。
「お掃除が修行なの?」と、侮るなかれ。
誰にでもできることだからこそ、継続は難しいものなのです。
「毎日きれいにしているんだから、どこも汚れていないよ」
「今日くらい休みましょう」
そんな心の声をふりはらい、箒と布とで黙々と空間を清めていくわけですが、
五月人形を飾るころから4月の終わりにかけて、怠け心の誘惑は一段と大きくなります。
なぜならこの時期、林丘寺には、ちょっぴり手がかかるお客様が逗留するから。
なにしろこの方、境内一面に薄桃色の花びらを敷き詰める散らかし魔。
「明日になったらまた積もっているんだから、掃除をしたってムダだよ」という内からの誘いに耳をふさぎ、花弁を集めてはふるいにかけ、砂利と分けるお仕事が連日発生します。
清掃時間がふだんの倍にもふくれあがる、桜の季節ならではの重労働。
それでも「咲きぬべきほどの梢、散りしをれたる庭などこそ、見どころ多けれ」とは
よく言ったもの。
わずかな花と赤い花軸だけを残した姿を見ると、あの苦労はどこへやら
来春のお越しを心待ちにしてしまうのです。